『とっても風流』作品解説 第一部「昆虫 VS 風鈴」 第二部「スペース茶道」 第三部「石庭の湖」
つねづね「風流」を怪しいと睨んでいた。いまでこそ誇るべき日本の美意識とされているけれど、その成り立ちは完全にギャグだったのではないか。
たとえば風鈴ひとつとってもただ鳴るだけ。窓からの侵入者を知らせる防犯グッズというわけでもない。茶道ではなんの変哲もない茶碗に法外な価値を与え、禅寺にはわざわざ運び込んだ石を並べる。「だからなに?」のひと言で消し飛んでしまう概念をここまで先鋭化し、また体系化したセンスには脱帽せざるを得ない。
このたびのコラボレーションで私が風流をテーマに選んだのは、そんな純粋なナンセンスへの憧れからだ。最初に風鈴を吊した人、茶碗を三回まわした人、庭に石を並べた人の初期衝動を追体験してみたかった。言葉にできない衝動を表現するのにまさにダンスはうってつけの手段であった。
演目の全体は「昆虫VS風鈴」「スペース茶道」「石庭の湖」という三部構成になっている。それぞれに一応ストーリーはあるが野暮な解説よりは見たままを感じて欲しい。
私の出したお題に対してキノコのみなさんは予想をはるかに上回る「超風流」を実現してくれた。風流とは微かな自然の気配とそれを感受する人との間に生まれる親密な「笑い」である。舞台から発するキノコたちの気配と衝動を、ただ感じ取っていただきたい。
天久聖一